雲川ゆずの本棚

本のレビューやおすすめ本紹介、イギリス生活の記事を書いています!

Shari Lapena "The Stranger in the House" あらすじ・感想

こんにちは! 

今回は、Shari Lapenaさんの "The Stranger in the House"という作品をご紹介します。

 

 

 

 

★著者について

シャリ・ラペナ:

カナダ出身の国際的なベストセラー作家で、2016年出版の「The Couple Next Door」が最も有名な作品です。小説家に転向する前は、弁護士と英語教師をしていました。現在トロント在住です。

 

★本の概要


・出版年:2017年
・出版元:Bantam Press
・ジャンル:ミステリ、サイコロジカルスリラー、警察小説
・ページ数:304ページ
・テーマやキーワード:家庭内関係、夫婦関係、近所付き合い、記憶喪失、交通事故、過去、隠し事
・おすすめする人:家庭内ミステリ、イヤミスなどがお好きな方、警察捜査の話がお好きな方


★あらすじ

とある女性が、幸せな家庭から怯え、急ぎ逃げた理由とは?

最愛の夫が仕事から帰ってくるのを待っているカレン。夫の一日の様子を楽しみに夕食を作っている。

それが彼女が覚えている最後の思い出だ。

病院で目が覚めたとき、カレンは自分がどうして入院したのかわからないまま、事故に遭ったと聞かされた。ふだん彼女が絶対に行かないような街の危険な場所で、車を制御不能にした、と。

警察はカレンが何か悪いことをしたのではないかと疑っている。しかし、夫や親友のブリジットの思惑がうずまくなか、そのうち、カレン自身も何を信じていいかわからなくなってくる……。

 

★感想

とても面白かったです!最初から最後まで、物語の世界にぐっと引き込まれてしまいました!


交通事故で記憶を失くしてしまう、という、ありふれているともいえる設定から、ここまで話が面白くなるんだなあと。登場人物も少ないので、混乱することなくスラスラ読むことができました。

 

物語の構成やプロットももちろんなのですが、私は、登場人物たちが本当に魅力的だなあと思いました。物語は、問題の人物に焦点を当てた三人称の視点から語られますが、心理描写が本当にうまいです。この”魅力的”というのは、あくまで物語のなかのことであって、ちょっと実際に近くにいたら困るかな、という人も何人かいたのですが……(笑)

 

なかでも物語を一段と面白くしているのが、ブリジットだなと。変な癖や傾向がありますが、人間らしいというか、憎めない存在です。夫との結婚生活が破綻しており、家の中で一人で編み物をしたり、近所の人を見たりして過ごしていますが、すべてではないにしろ、共感してしまう人も多いのではないかなと感じました。ブリジッドはとてもユニークなキャラクターで、彼女の視点から出来事を読むのがとても楽しかったです。

 

そして、最後も最高でした。登場人物の衝撃的な過去や深い秘密が明らかにされます。このひねりはドラマチックで全く奇妙なもので、小説の全体の流れを一気に変えるようなものでした。この結末を本当に楽しむことができました。それは小説の出来事や伏線を見事に結びつけているなあと感じました。

 

★一言キャッチフレーズ

人は、真実ではなく、見たいものを見ている。

 

★5段階評価(+英語の印象・特徴)


※あくまで私の主観によるものですので、参考程度にお考えください。


★★★★★(5/5)

 

物語のテンポも良かったですし、登場人物の心理描写が丁寧で、思わず、「自分だったら……」と考えてしまいました。最初から最後までページをめくる手が止まりませんでした!

 

 

 

******以下、作品の内容に触れています。ネタバレしたくない方、未読の方はご注意ください******

最後は、「えっ、どうなるの?」と気になってしまいました。これ、続きはないんですよね?(笑)ブリジットの復讐が幕を開けそうな気がします……。

 

それにしても、カレンって恐ろしいほど頭が良くて、怖いなあと。本当に、完璧な人って素晴らしいのですが、ある種の恐怖を感じます。トムがどうかこの先幸せになってほしい。ウソはもうなし、と誓い合ったけれど、カレンのお金の出どころを知ったらどうするのでしょう。でも、カレンは上手にやり切ると思うので、きっとそんなことはないと思いますが……。

 

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!