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Anthony Horowitz(アンソニーホロヴィッツ) “Moonflower Murders”あらすじ・感想

こんにちは!


今回は、Anthony Horowitz(アンソニー・ホロヴィッツ)さんの “Moonflower Murders”をご紹介します!

 

 

 

 

 

 

著者について


アンソニー・ホロウィッツ
1955年生まれ。子どものときから物語を作ることが好きで、友人に読み聞かせたりしていたそうです。推理小説、サスペンス小説家としてだけでなく、人気テレビドラマ「刑事フォイル」や「バーナビー警部」の脚本も手掛けるなど、幅広く活躍しています。代表作はアガサ・クリスティーへの最高のオマージュとして名高い「Magpie Murder カササギ殺人事件」の他に、ヤングアダルト小説「アレックスライダー」シリーズなどがあります。


本の概要


・出版年月:2020年8月
・出版元:ハーパー
・ページ数:608ページ(ハードカバー)
・シリーズ:Susan Ryeland #2


あらすじ

随所にちりばめられた手がかり。大きな秘密が隠されたミステリー小説。『カササギ殺人事件』のベストセラー作家が贈る、複雑に入り組んだ独創的な作品。


引退した編集者のスーザン・ライランドは、ギリシャの島でボーイフレンドと小さなホテルを経営している。何もない島で何もかもうまくいくように取り計らわなければならない責任に疲れ果て、スーザンはロンドンでの文学生活が恋しくなっていた。


そんなとき、イギリスでホテルを経営する英国人のカップルが、スーザンのもとを訪ねてくる。彼らの娘セシリーが、8年前に彼女が結婚したのと同じ日に彼らのホテルで起こった殺人事件の話を題材にした犯罪小説”Atticus Pund Takes The Case”を読み、何かに気づいたと電話で両親に告げたあと、行方が分からなくなったというのだ。その本の編集したのが、まさにスーザンだったのだ。


スーザンは、セシリーの身に何が起こったのか、そして彼女が何を見つけたのかを知るためには、ロンドンに戻らなければならなかった。
殺人事件とセシリーの失踪の手がかりは、この小説の中にあるに違いない。
しかし、セシリーを救うために、スーザンは自分の命を危険にさらさなければならなかった。

 

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感想

もう……最高の作品に出逢えました!アンソニーホロウィッツさんは、日本語で『絹の家』を読み、洋書で”Magpie Murders”を読んだことがあるのですが、今作も本当に素晴らしかったです。


”Magpie Murders”は日本語でも『カササギ殺人事件』として出版されていると思いますが、同じシリーズの第二作目で、主人公スーザン・ライランドが活躍します。本の中に本、ミステリーの中にミステリー、という構造は同じですが、”Magpie Murders”とはまた違ったおもしろさがありました。


古典ミステリー、特に著者ご本人も大好きだとおっしゃっているアガサ・クリスティーへの最上級のオマージュです。文学や芸術といった文化一般に対する愛と敬意がつまっていて、最初から最後までずっと楽しめました。
私が素晴らしい作品に出逢えた、と思うのは、「どんどん先が読みたくなる」と同時に「終わってしまうのが寂しい」と思う作品です。この作品は、私が思うそんな読書の楽しみに満ちていました。


複雑な人間関係、人々のアリバイ、動機、隠しておきたい秘密-。最後に関係者を集めて一人一人糾弾しながら、真犯人を明らかにする。そんなクリスティーらしさ、ポアロが出てくる小説らしさを存分に味わえます。ミステリー黄金時代へのオマージュでありながら、現代的な要素もあり、素晴らしいミステリー作品でした。


アンソニー・ホロウィッツさんが出演されていたポッドキャスト番組で、「物語は複雑だが、読者にはストレスなく、今、どんな状況で、これは誰なのか混乱させないように読んでもらえるように工夫した」的なことをおっしゃっていたのですが、まさにそうだなあと。本の中の本、ということで、合計の登場人物は多いですし、その登場人物も現実の人物をモデルにしているため、難しいかなあと思うのですが、そこがアンソニー・ホロウィッツさんのすごいところで、混乱することなく読むことができました。

 

 

 


*****以下、作品の内容に触れています。未読の方はご注意ください******


本当に最高の作品でした。まだ今年は終わっていませんが、確実に今年のベストの最有力候補の一つになりました。


私自身がアガサクリスティーの大ファンだというのもありますが、クリスティー作品を読んでいるのと同じような、読書の楽しみを味わえました。
個人的には、”Magpie Murders”よりも好きだなあと。作中作品である”Atticus Pund Takes The Case”も、黄金時代の完璧なオマージュで、ひとつの作品で4つの事件とその解決が楽しめました。推理小説好きをここまで楽しませる作品って多くはないんじゃないかなあと。


アナグラムや暗号がところどころにちりばめられていて、それが最後にどんどん明らかになるのも面白かったです。きっと著者ご本人も考えていて楽しかったんじゃないかなあと想像されます。レオ、に秘密が隠されてるんだろうなあとぼんやり思いながら読んでいましたが、まさか星座が関わってくるとは……。アンソニーホロウィッツさんの他の作品も読んでみたいなあと強く思いました!

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!