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山本周五郎『樅ノ木は残った』あらすじ・感想

こんにちは!

今回は、山本周五郎さんの『樅ノ木は残った』という作品をご紹介します。

 

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作品概要
著者について

山本周五郎

1903年山梨県に生まれました。1926年に文壇デビューをしました。1943年には、直木賞に推薦されましたが、受賞を辞退しました。作風は時代小説、特に市井に生きる庶民や名も無き流れ者を描いた作品で本領を発揮しました。彼の小説に登場する人物に、生きる上でのヒントとなる、含蓄のある台詞を言わせる、というのも彼の作風です。他の作家では、トルストイやサローヤンを好んで読んでいたそうです。1967年に亡くなりました。

 

本の概要


・連載:
1954年7月20日から1955年4月21日まで、そのあと中断をはさみ、1956年3月10日から1956年9月30日まで『日本経済新聞』に連載された。

・出版:
連載に書きおろしを加えて1958年に講談社(全2巻)から出版、現在は新潮文庫版が刊行されている(改版全3巻)。

・受賞歴:1959年に毎日出版文化賞を受賞
・ジャンル:歴史小説
・テーマ、キーワード:歴史、江戸時代、江戸時代前期、仙台藩伊達家、お家騒動
・そのほか:第8作目のNHK大河ドラマ(1970年1月4日 - 12月27日放送)、山本周五郎作品のなかで、最も多く映像化、舞台化されている。

 

あらすじ

敵か?味方か?お前はどちらだ―。

仙台藩主・伊達綱宗は幕府から逼塞を命じられた。放蕩に身を持ち崩したからだという。明くる夜、藩士四名が「上意討」の名の下に次々と斬殺される。疑心暗鬼に陥り混乱を来す藩政に乗じて権勢を増す、仙台藩主一族・伊達兵部と幕府老中・酒井雅楽頭。その謀略を見抜いた宿老の原田甲斐はただひとり、藩を守る決意をする。江戸時代前期に仙台藩伊達家で起こったお家騒動「伊達騒動」を題材にした傑作。

 

感想

山本周五郎作品はこれまでにも、多くはありませんがいくつか読んできました。義理や正義などが読者の期待通りに気持ちよく展開されることが多い他作と比べ、この作品は一筋縄ではいかない、人間同士のねじれや葛藤をリアルに描いていると感じました。日本史よりも世界史が好きで、大学受験でも世界史を選んだことから、不勉強ながら伊達騒動というのは今回初めて知りました。

 

今作を読みながら、伊達騒動について調べてみましたが、真相を断定することはできないのですね。山本周五郎は、かつて悪人とみなされてきた原田甲斐のイメージをひっくり返すような描き方をしています。戦国時代や幕末期のような派手さはないものの、静かな、武士としてのひとつの生き方を教えてくれました。

 

一言キャッチフレーズ

原田甲斐、という生き方


5段階評価(おすすめ度)

※あくまで私の主観によるものですので、参考程度にお考えください。


★★★★☆(4/5)


最後までお読みいただき、ありがとうございました!