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Lucy Foley “The Guest List”あらすじ・感想

こんにちは! 
今回は、Lucy Foleyさんの “The Guest List”についてご紹介します。

 

 

 

★著者について


ルーシー・フォーリー
1986年ロンドン生まれ。ダラム大学で英文学を学んだあと、出版業界で編集者として数年勤務。2015年出版の”The Book of Love & Found”でデビュー。現在はフルタイムで作家として執筆にあたっています。ミステリ、歴史フィクション、現代小説など、幅広いジャンルで作品を生み出しています。


★本の概要


・出版年:2020年
・出版元:ハーパーコリンズ(HarperCollins Publishers)
・ページ数:ペーパーバックで384ページ


★あらすじ


アイルランドの海岸から離れた島で、ジュール・キーガンとウィル・スレーターの結婚という、今年一番の結婚式のためにゲストはぞくぞくと集まってくる。
旧友たちは過去の恨みを持って。幸せな家族は隠れた嫉妬を持って。
ウエディングケーキがやっとカットされたところで、ある一人が死体で発見された。嵐が猛威を振るったため、全員が島に閉じ込められた。
全員に秘密があり、動機がある―
一人のゲストは生きてこの結婚式を去ることはできなかった…


★感想


ルーシーフォーリーさんの作品を読むのはこちらで2作目で、以前読んだ”The Hunting Party”がとても良かったので、こちらも大きな期待を持って読み始めました。
そして、その期待を裏切らない、素晴らしい作品でした。The Hunting Partyのときにも、アガサクリスティーのような作風と紹介されていましたが、今作もクリスティーのような雰囲気が漂っていました。まず、舞台となる孤島。ミステリ好きの方であれば、きっとすぐに「そしてだれもいなくなった」みたいだなと感じると思います。


孤島で行われる華やかな新郎新婦のための完璧なウェディング。物語は、ストーリーのカギとなる数人のそれぞれの視点で語られていきます。結婚式で会場の電気が消えた”いま”と、”結婚式前日”、”当日”、など、時間軸も色々と交差しながら進んでいきますが、章の始めに、これはいつのことで、誰の視点かということが記されていますので、混乱は少ないかと思います。ここが、著者のうまさだなあと感じます。


また、会話が多く、その会話の内容もスラングや英語の言い回しが多用されていて、リアリティがあります。ドラマを見ているような、さらには、その中に自分がいるかのような緊張感や臨場感を味わうことができます。


また、最期にタイトルの意味も明らかになり、「そういうことだったのか~!」と驚きと充実感を味わうことができました。
人間のダークな心理描写は秀逸でした。ぜひ、読んでみてください^^

 


*****以下、作品の内容に触れています。ネタバレしたくない方、未読の方はご注意ください(ルーシーさんの前作”The Hunting Party”の内容にも一部触れています)******

 

以前、ルーシーさんが出演されていたポッドキャスト番組でのインタビューでご自身もおっしゃっていたのですが、前作”The Hunting Party”と作風が似ているなあと思いました。もちろんこれは悪いことではないのですが、続けて読むとそれを強く感じるかもしれません。


もちろん舞台も出てくる人も違いますが、死体が見つかる今、なかなかそれがだれか明かされない、過去(今作では前日から)へと時間軸が戻り、そこでいろいろと秘密が明らかにされる、そして最後に死の瞬間が描かれ、真相がわかる―。という流れは似ているなあと感じました。


今作ですが、Will、どうしようもないなあと……。英国のパブリックスクールやボーディングスクールの文化は詳しく知らないので、ちょっと調べてみたいなあと興味が出てきました。


また、自分を振り返ってみると、人間関係は本当にシンプルにしておくのがいいなあ……と。私は幸いこれまで、素晴らしい人に囲まれてきて、人間関係で深く悩んだことはないのですが(交友関係が狭いと言えば狭いのですが)、それってありがたいことなんだなあと。


物語が進むにつれて、広げられた伏線がすべて回収されますが、これとそれがつながるの⁉、この人とあの人の関係ってそうだったの⁉と驚きの連続です。すべてが収まりすぎてしまって盛りだくさんかなあと思わなくもないですが、ルーシーさんの仕掛ける罠と謎のすばらしさに、読後には大きな充実感が残りました。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!