こんにちは!
みなさんは、ミステリ作品がお好きですか?
私は、子どものころから、和書・洋書を問わずミステリや推理小説が好きなのですが、その中でも、今回は正統派で論理的な雰囲気を持つものは、貴重だと思っています。
今回は、そんな作風を持つ、イギリス人作家R. Austin Freeman(リチャード・オースティン・フリーマン)さんの "John Thorndyke's Cases"という作品をご紹介します。
著者について
プロフィール
リチャード・オースティン・フリーマン:
イギリスの探偵小説家であり、彼の生み出したキャラクター、ジョン・ソーンダイク博士で最もよく知られています。緻密で慎重であり、探偵小説の分野では傑出した医学の権威であるフリーマンは、読者の知恵を試すだけでなく、現代の探偵小説の法医学的手法の多くにインスピレーションを与えました。彼は人生の多くを、ロンドンのミドルセックス病院で医師と外科医として過ごしました。エドワード朝の探偵小説家として最も有名な彼は、探偵小説を「スリラー」の世界から分離させ、より目の肥えた読者に受け入れられるようにしました。
オースティンフリーマン作品の魅力
事件解決のヒントとなる仕掛けについて、自分でできるかぎり実験をしたと言われていますが、そのとおり、非常に緻密で論理的な推理が魅力です。また、英語も正統派のイギリス英語が使われており、英語学習にもぴったりです。なお、「英語は少し苦手なんだよな……」という方もご安心ください!日本語訳もたくさん出ています。
オースティンフリーマンが与えた後世への影響
コナンドイルや、GKチェスタトンとならんで、英国ミステリの夜明けの存在となったフリーマン。
のちにフリーマンは“倒叙ミステリー”という新たなミステリのジャンルをつくりだしたことでも知られることとなります。
現代では「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」などが有名な、最初に犯人が明かされ、その心情やスリルを味わうところに楽しさがある倒叙の形式。それはのちに、妻殺しの完全犯罪をたくらむ医師の気持ちを鮮明に描いたフランシス・アイルズの『殺意』や、高額な遺産を目当てに、ある男が伯母を手に駆けようとする犯罪と意外な結末を描くリチャード・ハルの『伯母殺人事件』などへと引き継がれていきます。
また、世界だけでなく日本でもその影響は大きいです。たとえば、横溝正史さんの『犬神家の一族』も、フリーマンの小説から影響を受けたとされています。
作品概要
書籍情報
・ASIN : B08WPLTN6J
・ジャンル:推理小説、ミステリ
・ページ数:232ページ(Kindle版)
・言語 : 英語
・シリーズ:ソーンダイク博士シリーズ
・英語の難易度、特徴:折り目正しく、きれいな正統派イギリス英語です。書かれた時代は昔ですが、英語の勉強にももってこいです。
・テーマ、キーワード:古き良きイギリス、ミステリ、推理小説、科学捜査
・おすすめする人:イギリス英語が好きな方、論理的なミステリ、推理小説が読みたい方
主な登場人物
■ジョン・イヴリン・ソーンダイク:
ソーンダイク博士は、R.オースティン・フリーマン(1862-1943)の21の小説と40の短編小説の長いシリーズに登場する架空の探偵です。ソーンダイクは、著者によって「医学法学者」と表現されています。もともとは医学博士でしたが、弁護士に転向し、現代の言葉で言えば最初の法医学者の一人になりました。
彼の解決策は、犯罪の主人公や動機を見る前に、あらゆる可能性のあるデータ(埃や池の雑草を含む)を収集し、それらから推論を行うという彼の方法に基づいていました。フリーマンは、物語の中で言及されているすべての実験を自分自身で行うことによって、彼の方法が実用的であることを確認しました。
■クリストファー・ジャービス:
ジョン・ソーンダイク博士の友人で探偵小説の語り部です。シャーロックホームズ作品におけるワトソン氏と同じような役割を担っています。
あらすじ
イギリスの海岸沿いの崖の上にある寂れた村を訪れた法医学探偵のジョン・ソーンダイク博士は、誰もいない長い砂浜を散歩することにしました。彼は砂のうえに、数時間前に作られたと思われる二組の足跡を見つけます。
そこから少し離れたところで、ソーンダイク博士たちは犯罪現場にたどり着きます。男が心臓を貫かれて刺されているのが発見され、遺体は崖から投げ落とされているようでした。地元警察は手がかりを探していますが、ソーンダイクは砂の中の足跡から犯人の身元を特定できると確信しています。だんだんと潮が満ちてくるなか、彼には犯人を捕まえるのに数時間しか残されていませんでした。
(ほか、複数の短編小説を含む)
各章のあらすじ
The Man with the Nailed Shoes:爪の生えた靴を履いた男
ジャーヴィス博士はリトル・サンダースリーの海辺の村におり、ソーンダイク博士(まだ雇い主ではない)は彼のお客さんでした。殺人犯が浜辺に残した釘を打った靴。ふたりは、それを履いていた男の足跡を調べ、司法の誤謬を防ぐために贋作と濡れ衣を暴くことになりました。
The Stranger’s Latch-key:見知らぬ人の掛けかねのかぎ
鍵の入った樽から出てきたのは、毛羽立ち(スライドが与えられている)、足跡、タイヤの跡の3つでした。それらを手がかりとしながら、ソーンダイクは、より賢明な犯人(ターゲットを殺すのではなく、甥を誘拐した)である、邪悪なおじさんの痕跡にたどり着いていきます。
The Anthropologist at Large:人類学者は逃走中
犯行現場で発見された帽子の科学的分析から、ソーンダイクは、アイザック・レーヴェの家に強盗に入った男のプロフィール(毛髪、埃、頭髪指数、人種的特徴)を構築し、犯人を追い詰めていきます。
The Blue Sequin:青いスパンコール
青いスパンコールは、ソーンダイク博士が追跡中の、元愛人を殺害した青年の無実を証明するための決定的な手がかりとなっていきます。スリルがあり、サスペンス要素も多い内容です。
The Moabite Cipher:モアバイト暗号
教授の暗号グラムの解析についての短編です。読者は自分が不当に騙されていたことに気付き、P教授のように「この碑文を深く嫌悪して...」と思うようになります。 探偵小説の中で最悪の比喩の一つとして注目される、以下2つの名文があります:"「私の脳をしゃぶろうとするな」 「お前には自分の優れた脳があるのにしゃぶろうとするな」 "
The Mandarin’s Pearl:マンダリンの真珠
フリーマンにしては珍しくやや下品な作風ではありますが、ベイリーの「オンリー・サン」と似たようなプロットで、真珠を購入した神経症の青年の死が絡んでいる作品です。 容疑者の少なさもポイントとなります。
The Aluminium Dagger:アルミニウム・ダガー
この本のなかでも、密室殺人事件を冷静に、緻密に扱った数少ない事件のひとつで、カーやチェスタートンのようなロマンティックでドラマチックな演出はありませんが、捜査は詳細に行われており、カーが『孔雀の羽根殺人事件』や『ジュダの窓』で用いたのと同様の手法で、きちんとした効率的な捜査が行われています。
A Message from the Deep Sea:深海からのメッセージ
この本のなかで、私のお気に入りの作品でもあります。枕から出た砂、直径25倍に拡大したもの、これが大きな手掛かりとなります。被害者の女性の枕にあった有孔虫と毛根の検査から、ソーンダイク博士は若い女性が母親の下宿人を殺害した無実を証明することに挑戦していきます。
一言キャッチフレーズ
緻密な捜査を、ご覧あれ
5段階評価(おすすめ度)
※あくまで私の主観によるものですので、参考程度にお考えください。
★★★★☆(4/5)
Kindleで読むことができます!
さて、ここまでご紹介してきた"John Thorndyke's Cases" ですが、こちらはペーパーバックのほかに、電子書籍リーダーであるKindleでも読むことができます!ペーパーバックより手が届きやすいですので、ぜひ、手に取ってみてくださいね。
John Thorndyke's Cases Illustrated (English Edition) Kindle版
Kindleとは?
よく聞くことが多いKindleとは、いったい何?という方のために、以下説明です。
Amazon Kindleとは、Amazon.comが製造・販売する電子ブックリーダー端末、同ソフトウェアおよび電子書籍関連サービスである。専用端末やパソコン、スマートフォン、タブレットなどで電子書籍を読める(開発元であるAmazonの説明から引用)。
Kindle Unlimitedとは?
2016年8月から始まったAmazon(アマゾン)の電子書籍読み放題サービスです。月額980円という低価格で豊富な本・雑誌・マンガが読めます。
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そのほか、Kindleで読めるフリーマン作品
As a Thief in the Night (English Edition) Kindle版
For the Defence, : Dr. Thorndyke (English Edition) Kindle版
The D'Arblay Mystery (English Edition) Kindle版
たくさんの魅力が詰まったフリーマン作品。今回は、その代表作をご紹介しました。ご興味のある方は、ぜひお手に取ってみてくださいね。最後までお読みいただき、ありがとうございました!