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山本周五郎『雨あがる』感想

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★著者について


山本周五郎
1903年山梨県に生まれました。1926年に文壇デビューをしました。1943年には、直木賞に推薦されましたが、受賞を辞退しました。作風は時代小説、特に市井に生きる庶民や名も無き流れ者を描いた作品で本領を発揮しました。彼の小説に登場する人物に、生きる上でのヒントとなる、含蓄のある台詞を言わせる、というのも彼の作風です。他の作家では、トルストイやサローヤンを好んで読んでいたそうです。1967年に亡くなりました。


★本の概要


・ジャンル:時代小説

・1951年7月にサンデー毎日増刊号に掲載。「おごそかな渇き」(新潮文庫)に所収。


★あらすじ


職もなくあてのない旅をする武士「三沢伊兵衛」、そしてその妻「たよ」。ある日大雨で足止めを喰らい、立ち寄った宿で、さまざまな人々の喧嘩に出くわす。命危険を顧みず、仲を取り持つ伊兵衛。その一部始終は藩主の目に届くこととなる。藩主は伊兵衛の人柄を気に召し「剣術指南番」として城に迎い入れようと申し出る。職にありつけるかもしれない、大きな期待を胸に吉報を約束する伊兵衛。しかし、事態は望まぬ方向へと進んでしまう・・・・・・・。・・・そして、雨上がる・・・。晴々とした空、青青とした緑に誘われ再び当てのない旅に出る運びとなった三沢夫婦。しかしながら、二人の心はいつにもまして晴れやかだった。

映画の原作にもなり、貧しいながらも心優しい人々のお互いを信じ合う姿、侍という生き方よりも人間らしい生き方を選ぶ主人公の生き方を味わい深く描く。


★感想


現代でも「自分は生き方が不器用だ」と思っている人は少なくないと思いますが、それでもいいんだ、人間らしいやさしさや思いやりを持っている方が大切なんだと、物語の中で、爽やかな語りで教えてくれます。


時代小説は好きでよく読むのですが、中でも山本周五郎作品は、忘れてしまいがちな人として大切なこと、やさしさを教えてくれる気がしています。時代小説を読むことは、当時のことを知り、新しい発見をすると同時に、変わらないものに気づくプロセスでもあると思っています。


白か黒か、善か悪かで一瞬で判断されてしまう現代において、本当にそれでいいの?と立ち止まって考えさせてくれる、珠玉の作品です。
おたよさん、強いなあ。芯があるってこういうことなんだなと、物語の最初から最後まで彼女の姿を見ていて学ぶところです。

  

 

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